長岡先生のムック本が発売されました(その1)
2014-07-15


入門スピーカー自作ガイド
炭山アキラ・著 電波新聞社 ¥2,000+税

しかし、こういう理論解説ばかりではいささかムックとしての華に欠けるきらいなきにしもあらず、そこで「何かいい企画はないですかね?」と林さんに相談を受けた、という次第です。

長岡先生といえば、もう代名詞となっているのは「自作スピーカー」です。そこはひとつ何か先生の作例を復刻しましょうという提案をしたのですが、ただ復刻というだけではパンチに欠けます。やはり一定の時宜にかない、2014年の今その作例を復刻する意味合いのようなものを読者に納得してもらわなきゃいけませんからね。

それで「何かいいのがないかな」と考えていたところへ、まるでこの機を待っていたかのように登場したのがフォステクスの限定ユニットFE103-Solでした。以前に詳細をエントリしていますからそちらも参照していただけると幸いですが、FE103誕生50周年を記念して登場したこの限定ユニット、驚くべきことに16Ω版も用意されているのです。

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フォステクス◎フルレンジ・スピーカーユニット
FE103-Sol ¥6,500+税

今発売されている月刊「ステレオ」7月号でも少し解説していますが、16Ωのユニットというのはそもそもアウトプット・トランス(OPT)を持つ真空管アンプなどと組み合わせるとOPTの負担が軽くなり、音質向上が見込めるという理由から開発・生産されていたユニットで、OPTを持たないソリッドステート・アンプが主流となってからは、より多くの電流を流すことができる8Ωのユニットが主流となっていました。今は海外製を中心に4〜6Ωのユニットも多いですね。

フォステクスの16Ωユニットは1980年代の半ば頃には生産完了となっていた記憶があります。1960年代の初頭に生まれたソリッドステート・アンプはOPTがいらない低コスト性と放熱の少なさ、スペースファクターの良さなどから瞬く間に真空管アンプの市場を蚕食し、1980年代にはもうほとんど駆逐してしまっている感がありましたから、それも致し方ないかと思います。

一方、こと日本国内においては1990年代の初め頃までにほとんど絶滅危惧リストへ載りそうだった真空管アンプは、エイアンドエム(エアータイト)やトライオードといった新世代メーカーの台頭もあって90年代の半ば以降に劇的な回復を遂げ、この21世紀には一般的なソリッドステートと真空管、そして高効率のいわゆる「デジタルアンプ」で三者鼎立、といったイメージの市場が形成されています。そういう時代の趨勢をしっかりと見定めた上で16Ωユニットは開発されたのでしょうね。慧眼だったと思います。

そしてFE103の16Ωというと、わが同世代以上の長岡ファンの皆様にとってはもう切り離すことのできない作例が浮かぶのではないかと思います。「マトリックス・スピーカー」です。1本でステレオ、いやそれのみならず部屋中を音が飛び交う超サラウンド音場を展開してくれる奇跡のようなスピーカーで、フルレンジ・スピーカー、バックロードホーンとともに「長岡鉄男の象徴」というべきスピーカーではないかと私は考えています。

何で16Ωユニットでないとダメなのかというと、この形式はユニット接続の都合で総合インピーダンスが16Ωユニットなら約5.3Ωになってしまうのです。つまり、8Ωユニットで組めばトータル約2.7Ωになるということですね。

アキュフェーズ製品を筆頭に昨今の高級アンプなら2Ωくらい余裕でギャランティしてくれるものですが、それでもいまだ結構なパーセンテージで4Ωまでしか保証していないメーカーがあり、そういうアンプでも鳴らせなくはないにしろ、その結果アンプに問題が起こってもメーカー保証が受けられなくなってしまうのです。


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